【期日報告】神戸石炭行政訴訟 控訴審 第1回期日はじまる(2021/9/13)

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2021年3月15日の一審判決を受け、3月26日に控訴した国に対する行政訴訟の控訴審が始まりました。大気汚染物質を排出し、気候変動を加速させる温室効果ガスを大量に排出する石炭火力発電所の建設を認めたことは違法であり、国の判断が誤りであることを訴える裁判です。

控訴人(原告)側から、PM2.5、原告適格、CO2排出による気候変動について、それぞれ控訴理由を法廷でプレゼンテーションしました。

PM2.5を評価していない発電所アセスの違法性

まず金崎弁護士から、PM2.5を審査項目としていない国の発電所アセス省令の違法性について説明がありました。「今日の科学的知見ではPM2.5の予測・評価手法が存在し、米国等他国では環境影響が予測・評価されている。日本でも一部の自治体には環境影響評価マニュアルがあること等から、PM2.5を審査項目としない発電所アセス省令は違法である。」と主張しました。

また、仮にアセス省令自体が違法でないとしても、石炭火力発電所は、「他の燃料種に比べてより多くの温室効果ガスやPM2.5等の大気汚染物質を排出する石炭火力をあえて選んでいる以上、PM2.5を環境影響評価項目に選定すべき事業特性を有している。」と指摘しました。発電所の立地地域である、神戸市、芦屋市周辺は、今もなお、行政においては「兵庫県地域公害防止計画」を策定し対策が行われています。さらに、人口密集地で、住宅地や学校、病院等の施設にも近い場所です。こうした地域特性を踏まえると、「PM2.5を予測・評価していないことに違法性がある」と主張しました。

原告には気候変動による被害を争う権利がある

青木弁護士からは、「気候変動による被害を争う資格が原告にはない」と、原告適格を否定した一審判決に対して反論しました。「原告適格」とは、その人が問題と訴える被害について裁判を起こせる資格を意味します。より平易に言い換えると、一審判決の内容は、日本において、住民が気候変動の影響や被害を懸念して、裁判所に訴える権利はないということです。

気候変動による被害を争わせないとした一審判決について、オランダ訴訟やドイツ憲法訴訟等の気候変動訴訟においては、気候変動による災害が人々の生命や身体、財産の安全にとって脅威となるとし、原告の訴えを認めています。こうした他国における司法判断の情勢に逆行し、日本の裁判所においては、「(気候変動に関して)裁判を受ける権利が否定されている」と、厳しく批判がなされました。

原告適格が認められるか否かを判断するにあたっては、処分の根拠法令及び根拠法令と目的を共通にする関係法令が、原告となろうとしている個人の権利・利益を保護する趣旨を含むかどうかが考慮されます。今回の、石炭火力発電所の建設に際しては、電気事業法、環境影響評価法、環境基本法が根拠法令及び関係法令にあたります。それらに、人の健康または生活環境に係る被害を防止する趣旨が含まれている点が指摘されました。また、気候変動による被害のように、排出源からの距離と個々人の被害に関係がない事案については、根拠法令が原告を手続き上どのように扱っているかが重要になってきます。そこで、弁護団では、環境影響評価手続きにおいて、一種の特別扱いがなされている人たちには「原告適格を認めるべきである」との主張がされました。特別扱いというのは、アセスの対象自治体(本件の場合、神戸市、芦屋市)に暮らす、あるいはそこへ通勤・通学する原告(市民)を指します。そして、環境アセス手続きが「対象事業に係る環境影響を受ける範囲であると認められる地域」の住民について、より実効的な参加の機会を与えているのであるから、これらの住民(神戸市、芦屋市に在住、通勤・通学)には原告適格が認められるべきであるとの主張がなされました。

判断プロセスの不合理性を問う訴訟

最後に池田弁護士より、一審判決がCO2に関する原告側の主張について、「自己の法律上の利益」に関係のない違法を争うものとして主張できないと判断(行政事件訴訟法10条)した点に対する反論がなされました。

一審判決は、大気汚染物質規制とCO2規制を分けて検討し、前者は原告らの生命健康に関係するもの、一方で後者は公益保護目的で規制がなされているとして、後者(気候変動への影響)に関する主張を制限しました。しかし、環境公益とは個人の環境に関する利益が集積したものでもあります。環境影響評価法(環境アセス)1条も、アセス制度の目的を「現在および将来の国民に健康で文化的な生活の確保に資すること」とし、個々人の生命健康の保護という、憲法の究極の目的を志向しています。そのため、一審判決のように、「個別的利益と環境公益とを切りはなす考え方は、およそ市民には受け入れがたいものである。」として批判がなされました。

また、過去の裁判例に照らしても、東海第二原発許可取り消し事件の高裁判決は、一般的な公益保護に関する規定について、原告に主張を認めていると指摘されました。

今日、世界がパリ協定の下、ゼロエミッションに向かっていく情勢の中、公益保護目的であることを理由にCO2大量排出の違法を争えないとして原告へ主張制限することは、時代にまったくそぐわないものです。

加えて、原告側の主張は、確定通知がなされるに至ったプロセスが、(1)環境アセスとして収集すべき環境情報を適正に集め、(2)国の目標(パリ協定)と整合する適正な環境配慮をしているか、(3)これらに基づいて経産大臣が判断したか、という判断プロセスの不合理性を争うもの(法律の違法性を問うているのではなく、法に基づいて適切に執行されていたか否か)である点が強調されました。

 

その後、別会場とオンラインにおいて、期日報告会が開催され、原告代表幹事から控訴審を闘う重要性が述べられ、弁護団から今後の見通しを説明しました。また、来場いただいた支援者の方々からも質疑を行いました。

次回期日は、2021年12月14日(火)14:30、大阪高裁にて予定されています。

なお、12/24の期日も、オンラインでも期日報告会を開催する予定です。

 

 

 

ぜひご参加ください。

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