【期日報告】民事訴訟第6回期日について(2020/01/28)

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1月28日、神戸地裁にて、神戸製鋼や関西電力等を相手に石炭火力発電所の建設・稼働差止め
を求め、地元から40名の市民が立ち上がり、提訴した民事訴訟の第6回期日がありました。

法廷でのやり取り

これまでの被告ら(神戸製鋼及び子会社+関西電力)は、気候変動による権利侵害については、具体性、蓋然性の点で不十分で、受忍限度を超えるものではなく、原告らの法的保護に値する「権利」を侵害するには至らないと主張してきました。今回の期日では、原告・弁護団から、再反論として準備書面(9)を提出し、法廷にて概要説明を行いました。

危険な気候変動による人権侵害について

初めに浅岡弁護士より、本件石炭火力発電からの今後30年に亘る膨大なCO2排出行為は危険な気候変動を拡大・加速させるものであり、社会的に許容されないと主張しました。そして、昨年末にオランダの最高裁判所で出された判決を引用し、危険な気候変動による影響は、人の生命・健康等への現実的で切迫した脅威であること、本件石炭火力発電所の新設・稼働による原告らの人権侵害性とその重大性について述べました。また、オランダ最高裁判所が判決後まもなく判決文の英訳をウェブサイトに掲載したことで、本判決に対して他国からも大きな関心が寄せられている点等も強調されました。(もちろん、本件神戸石炭火力訴訟も、その一つです!)

オランダ最高裁判決の概要

2012年、同国の市民と環境保護団体であるUrgenda財団がオランダ政府の気候変動政策が不十分であると訴えたもの。オランダ政府は、温室効果ガス排出削減目標を、2020年までに1990年比で30%削減としていたが、後に、目標設定を後退させて、20%削減とした。これに対して、原告側は、科学的に必要とされている気候変動対策のレベルは、2020年までに少なくとも25%の削減であると、裁判所へ訴えた。裁判は最終審まで争われ、2019年12月20日に原告勝訴で確定した。裁判所は判決において、危険な気候変動による被害は、現実的であり、かつ、切迫した危険であると認定。危険を防止する適切な措置がとられる必要性があるとし、オランダ政府に対して、原告の請求に沿う政策を実行するよう命令した。

石炭火力事業と気候変動との因果関係と権利論

続いて池田弁護士より、当該石炭火力事業と気候変動の因果関係と、権利論(人権侵害)について、被告に対して再反論が行われました。まず因果関係について、本件石炭火力発電所の新設により、神戸製鋼らは、先進国である日本のエネルギー起源排出量の1%を占めるような巨大排出源となるのであり、世界全体の排出割合で見た場合に「大量排出者」であることの説明がありました。そのうえで、気温上昇を産業革命前から1.5〜2°C未満に抑制するには、2050年までの世界の総CO2排出量を1兆トン未満に抑える必要があり、CO2の総量削減が求められている状況です。また、本件新設石炭火力発電所がひとたび稼働を始めると30年ほど排出を続けることとなり、他の主要排出源とともにCO2の濃度上昇に実質的に寄与する。そして、進行中の気候変動を激化し、人権侵害すると主張しました。このことを金魚鉢に塩を徐々に入れていくと、いずれ金魚が住めなくなる、というわかりやすい例えを用いて、その排出責任の重大さ、気候変動に起因する個々の損害との因果関係について、説明がなされました。

神戸発電所1-2号機と建設中の3-4号機(2020.2.2撮影)

人権侵害に対する予防の権利を求めて

池田弁護士は、続いて、人権侵害について、気候変動による被害は時間をかけて深刻化する蓄積型のものであり、その悪化を待たずに、可能な限り早い段階で原因を除去することが法的な原理からみても重要であることを指摘しました。そして、原告の訴えである人権侵害の「おそれ」とは、被害の現実性・切迫性をいうものだと訴えました。事業活動としてのCO2排出行為の継続により、確実にその濃度が上昇して気候変動を悪化させるという原理と、その影響を受けて発生する事象によって人が生きていく基盤を喪失するという長期的なプロセスが現実化している現状をあわせ考えるならば、その被害を回避する合理的な方法として、できるだけ早い段階において原因行為を除去ないし抑制する必要があります。そういう意味で、人権侵害の現実的危険性は切迫しているのであり、対策の実施のために、被害の累積・悪化を待つ必要はありません。池田弁護士は、被告が建設しようとしている巨大排出源から長期間排出行為を継続してもCO2の総排出量を増加させない理由と、このような人権侵害を引き起こすことがないという理由について、被告の側に立証する責任があると指摘しました。加えて、人権の一内容として認められている「平穏生活権」について、大阪空港訴訟大阪高裁判決(大高判昭和50年11月27日)では、「権利侵害が現実化していなくともその危険が切迫している場合には、あらかじめ侵害行為の禁止を求めることができるものと解すべきであって、このような人格権に基づく妨害排除および妨害予防請求権が私法上の差止請求権の根拠となりうる」と判示されたことを紹介し、気候変動やPM2.5による平穏生活権侵害の現実性・切迫性を有する以上、本件差し止め請求は認められるべきことを指摘しました。

気候変動が起こっていることを認めないの?

今回の期日で注目された一つとして、被告らが事前の準備書面において、気候変動の問題を「一般論」であるとして「認否の要をみない」と回答している点がありました。つまり、気候変動による被害のおそれを訴える原告らの請求に対して、気候変動が「ある」とも「ない」とも答弁していない状態です。これについて池田弁護士より、「気候変動の影響がないというのか、あるけれども被告としては対応の必要はないと考えるのか、対応の必要はあるが十分に行っているというのか、どういう意味かを明確にされたい」と釈明を求めました。(まさか、被告らは気候変動が起こっていないとでも?)

最後に、「権利というものは時代に応じて変化していくもの」と指摘し、かつては十分な権利を認められていなかった女性や一部の労働者に対する権利保障状況の変化を例に、今日の状況においては危険な気候変動から保護される権利も人権として認められるべきである点が述べられました。

また、和田弁護士からも、気候変動について「認否の要をみない」という被告の主張に対して、気候変動による影響が決して一般論ではなく、現実に被告の排出行為により世界の気候変動が促進され、それが翻って日本、神戸、そして原告に対する被害の現実化・切迫化をもたらしていること、この点を今後立証していくと、述べられました。

関電が神鋼との契約書の一部を開示

原告らは、神戸製鋼らの排出行為と関西電力の電力需給行為に一体性(電力受給契約における関電の支配性)があると指摘してきました。今回の期日で、ようやく、関西電力から電力受給契約の契約書が一部黒塗りされてはいるものの証拠として提出されました。この点に関し、杉田弁護士から、実際の計画関係についてこの証拠に基づき今後検討をすすめていく旨、述べられました。

今後の裁判期日について

【行政訴訟 第6回期日】
日程:2月17日(月)14:00
場所:大阪地裁 1007号法廷
※期日終了後、大阪弁護士会館1110会議室にて報告会を開催予定です。

【民事訴訟 第7回期日】
日程:2020年4月14日(火)14:00
場所:神戸地裁 101号法廷
※期日終了後、神戸市男女共同参画センター(あすてっぷ)「セミナー室1」で、報告会を開
催予定です。 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて中止となりました。

【民事訴訟 第8回期日】
日程:2020年6月30日(火)14:30
場所:神戸地裁 101号法廷
※期日終了後、報告会を開催予定です。

 

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